麦穂8月号巻頭言 ヒマワリ 主任司祭 細井保路

2025/8/12

             ヒマワリ                          主任司祭 細井保路(ほそいやすみち)  ロシアによるウクライナ侵攻という衝撃的なニュースを耳にしてから、もう3年半が経ってしまいました。そして、いまだに終わりが見えません。ウクライナという国の名前がニュースになつたとき、不謹慎ですが、私は即座に『ひまわり』という映画を思い出しました。ソフイア・ローレンが主演の映画で、ウクライナのひまわり畑が印象的に描かれている映画でした。ヘンリー・マンシーニの物悲しい音楽は今でも鮮明に思い出すことができます。70年代に青春を過ごした同世代の人たちもみんなそうだったのではないかと思います。  「ウクライナと言えば『ひまわり』だよね。」と幼稚園の先生たちにも同意を求めたのですが、50年以上も前のことなので、全く通じませんでした。  戦争を終わらせること、戦争を始めないように努力すること、戦争のむなしさを伝えること、それは、私たちが神さまの救いを確信しながらもなお、この世に生きる限り、祈り、願い続けなければいけないことです。原爆投下を受けた記憶を持つ日本に暮らす私たちにとっては、8月は特にその思いを新たにする月です。悲しみや憎しみを生むだけの戦争をやめ、傷ついた状況から立ち上がって何度でも平和を築こうとする努力を私たちはしなければならないはずです。そう思いながら、同時にどうにもならない自分の無力さも感じてしまいます。平和を願い祈り続けることはもちろんですが、それだけでなく、何か小さ なことでもいいから行動を起こす必要があります。  その小さなこととは何でしようか。悪の連鎖を断ち切る最初の一歩は何でしようか。悪に対しては、私たちは怒らなければなりません。「ゆるせない」ことはたくさんあるのです。しかし、「ゆるさない」と相手を断罪したとたん、相手が変わる可能性を拒み、自分の心の成長も拒むことになるのです。誰かを特定して断罪するという誘惑に負けないことこそ、誰にでもできる平和への第一歩です。そのうえで、戦争のむなしさを伝え続けることができればと思います。  毎年、あの映画のシーンのように、 8月には大きなヒマワリがたくさん咲くことを願って、春に種を蒔きます。でもなぜか、私の記憶にあるような大輪のヒマフリは咲きません。品種改良されているせいか、土壌のせいかはわかりませんが、今年も華奢なヒマフリが咲き始めました。私がもっと力強く平和のために働くことができたら、いつか大輪のヒマフリが咲いてくれるはずだと思っています。

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