麦穂7月号巻頭言 平潟湾    主任司祭 細井保路(ほそいやすみち)

2021/7/10

平潟湾                              細井保路(ほそいやすみち)  最近スマホにパスモのアプリを入れました。改札で失敗したら恥ずかしいので、海の公園へ散歩に行ったついでに、シーサイドラインに乗ってみました。誰も見ていない改札を無事に通過し、とりあえず金沢八景まで行きました。  上から見る平潟湾はなかなかいい眺めで、海上に並ぶたくさんの支柱にヨットやボートが係留されている光景がすっかり気に入りました。それで時々、用もないのに八景までシーサイドラインに乗っています。係留されている小舟を見ると、大好きな詩編107篇を思い出します。  沖に向かって船出する者、海を渡って商いする者、  彼らは大海原で神の不思議なわざを見た。  神が命じられると嵐が起こり、波が高くなった。  舟は天まで昇り淵まで降り、彼らは生きた心地もしなかった。  酔った人のようによろめき、なすすべも知らなかった。  彼らが苦悩の中から神に助けを求めると、神は苦しみから救い出された。  嵐は鎮められ海は凪ぎとなった。  神は彼らを目指す港に導かれ、彼らは静かな海を楽しんだ。  人の子らよ、神のいつくしみとその不思議なわざに感謝せよ。  ついでにもうひとつ思い出すのは、イエスさまが嵐を鎮められたエピソードです。6月20日の福音朗読(マルコ4・35)がちょうどその箇所でしたが、イエスさまは小舟の上から、荒れ狂う風に向かって、「黙れ、静まれ」とおっしゃったのです。この時のイエスさまの声のトーンを想像してみましょう。私たちが、「うるさい、黙れ」と叫びたくなるときは、気持ちの上では追いつめられていて、心はざわついています。それに対し、イエスさまの心はとても平静なのです。弟子たちが大慌てする中で、イエスさまは平然と眠っておられたのです。周囲の混乱に巻き込まれず、慌てふためくことなく発せられた「黙れ」という言葉は、どんな深みを持っていたのでしょうか。弟子たちは、その声を聞いたのです。イエスさまがいつも持っておられた深い平和に満ちた心を感じとれるまで、イエスさまの発した「黙れ」の声色を想像してみましょう。

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