麦穂6月号巻頭言 ハンゲショウ 主任司祭 細井保路

2025/6/10

              ハンゲショウ                         主任司祭 細井保路(ほそいやすみち)  夏至から11日目のことを半夏生(ハンゲショウ)と言います。つまり7月の初めのことですが、この日までには田植えを済ませなければいけないという目安にもなっているそうです。「半夏」という植物が生える頃というのが由来だそうですが、ちょうど同じ頃、6月に入ると小さな花穂をつけ始める植物を「ハンゲショウ」と呼ぶようになりました。  漢字では、「半夏生」とも「半化粧」とも書くようです。なぜ、「半化粧」なのかと言うと、花穂の周囲の葉が半分ほど、白粉を塗ったように白くなるからなのです。それで、草むらに生えていても、目につくのです。ちょうどこの時期に山へ行くと、鬱蒼と茂っている木々に絡みつくように生えているマタタビの葉も、ハンゲショウと同じように白くなっていて目を引きます。梅雨時の藪で、塗りかけの白粉のような白い色は不思議な清涼感を漂わせています。  教会の庭の一角にも、実はハンゲショウが咲いています。この時期になるまでほとんど気がつかないのですが、葉が白くなり始めてその存在が目にとまります。今年の一月に帰天された今田純子さんが、以前、ご自宅の庭から一株持って来てくださったのが、毎年この時期になると咲くのです。  植物の方は、白くなって、虫にアピールしているだけかもしれませんが、私にとっては、ふと、葉の白さに気づき、ふと立ち止まるという貴重な時間を与えてくれているように思えます。  世の初めから、「あなたを愛している」という神さまの声は鳴り響いているはずなのに、そのメッセージは、目の前の騒音にかき消されがちになっています。また、復活なさったイエスさまに先取りされた世の完成の時からは、「あなたはゆるされている、救われている」という神さまの声が届いているはずなのに、様々な心配ごとに心を奪われて、聞き取りにくくなっています。そんな私たちにとって、ふと立ち止まることは、ことのほか大切なことです。大事なメッセージが騒音でかき消されているなら、まず、私が立ち止まらなければなりません。騒音を立てているのは、バタバタしている私自身だからです。それでも周囲が騒音だらけなら、時には静かなところに移動する必要もあります。父である神は、子どもの私たちにわかるように、過去から「大好きだよ」と呼びかけ、未来からは「大丈夫」と声をかけてくださっています。立ち止まってその声をしっかりと聴き取りましょう。

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