麦穂12月号巻頭言 シュウメイギク 主任司祭 細井保路
2025/12/14
シュウメイギク 主任司祭 細井保路(ほそいやすみち) 9月に園芸店に行ったときに、たくさん蕾をつけたシュウメイギクの株を見つけました。秋から少し寂しくなる庭にちょうどいいと思って、オミナエシやワレモコウの鉢と一緒に買って帰ってきました。しかし昼間の日差しが強くて、シュウメイギクだけは、いくら水をやってもなんとなく元気がありませんでした。そんな矢先に私は入院してしまいました。その後も日照りが続いたので、シュウメイギクはちゃんと根付かず、きっと枯れてしまうだろうと思っていました。 11月になってやっと退院したのですが、案の定シュウメイギクには、花が咲いた痕跡がありませんでした。しかし、なんとか枯れずに根付いてくれていました。しかも3つだけ蕾が残っていたのです。そして、もう12月になるというのに、白い清楚な花を見せてくれました。この原稿が印刷される頃には、最後の一輪も散ってしまっているかもしれませんが、あの炎天下で枯れずにいてくれたうえに、花まで見せてくれたのは、なんとも嬉しいことでした。まるで花が退院を待っていてくれたかのようでした。 待降節は救い主の到来を待つ期間、神さまを迎える準備の期間です。「今日ダビテの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」という天使の言葉に始まり、「悔い改めよ、天の国は近づいた。」という洗礼者ヨハネの言葉、「御国が来ますように」という主の祈りの言葉など、いくつもの言葉とイメージを重ね合わせながら、教会は、待っこと、心の準備をすることを大切にしてきました。その伝統を受け継いで、この世界に神さまをお迎えするために、私たちに何ができるだろうかと、毎年繰り返し考えることは大切です。そして、私たちが心がけるほんの少しの善意や、ささやかな祈りや、小さな犠牲が幾重にも重なって、待降節の時間はますます豊かになっていくのです。 積極的に「待つ」ことはすばらしいことなのですが、神さまもわたしたちを待っていてくださることを忘れてはなりません。馬小屋に馳せ参じた羊飼いたちは、乳飲み子の姿で待ち受けてくださるイエスさまに出会うのです。クリスマスは、神さまをお迎えするお祝いなのですが、実は、神さまこそ、わたしたちが気づくまでずっと待っていてくださるのです。


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